2017年11月25日土曜日

ガイア・シンフォニー間奏曲 ①

ガイア・シンフォニー間奏曲 ①
龍村仁・著  インファス  1996年1月刊

 植物と心を通わせ共鳴し、心に描いたことが現実になる

  映画『地球交響曲(ガイア・シンフォニー)』の最後の楽章「誕生」の中で、私はアメリカの宇宙物理学者フリーマン・ダイソン博士の次のような言葉を引用した。
  「入間の想像力は単なる絵空事ではない。人間は心に描いた事を必ずいつか実現する。そのために。神は人間に想像力を与えたのだ」
  ダイソン博士は、わずか19歳の時イギリスから招かれてアメリカに渡り、アインシュタインやオッペンハイマーなどと共に、プリンストン高等学術研究所で研究活動を始めた世界超頭脳の一人である。22歳の時、相対性理論と量子力学を統合する数式を発見し、ノーベル物理学賞の候補に挙がった事もある。
  そんな彼が“人間は心に描いた事を必ずいつか実現する”と言う。このダイソン博士の言葉の背後に、どのような科学的考察があるのかは、私には推量する術もない。しかし私にはその事が体感としてわかる。“心に描いた事が現実になる”という事を体験として知っている。『地球交響曲』を企画してから撮影、編集を経て完成するまでの3年間に、私はほとんど“奇跡”としか思えないような出来事を数多く体験した。
  その全てを書くことはできないが、少なくとも確率的には絶対にあり得ないような“偶然”によって出演者と出会い、交渉がうまくいったり、あり得ないようなタイミングで撮影が成功する事がたびたびあったのだ。もし“全てを知っている〈神〉が仕掛けたのだ”という言い方を避けるとするなら、心すなわち想像力が何らかの形で現実を動かしたのだ、としか言いようのない事ばかりだった。
  心がどのような仕組みで現実を動かすか、を科学的に説明する方法をまだ私達は知らない。しかしユングの言う共時性(シンクロニシティ)は現実にしばしば起こるし、そこに心の在り方が深く関わっているのだけは確かな事だろう、と私は思う。

 トマトと心を通わせる

  『地球交響曲』の出演者のひとり野澤重雄さんは、たった一粒のごく普通のトマトの種から遺伝子操作も特殊な肥料も一切使わず13000個も実のなるトマトの巨木を育てた人である。私は野澤さんにお願いして、映画のために種植えを行ない、13000個の実がなる巨木に成長するまでの過程を撮影した。このトマトの成長過程が、6人の出演者のオムニバスであるこの映画の縦軸となり、最後の楽章『誕生』では、幹の太さ10㎝、葉の拡がり直径10mの巨木に成長したトマトが、一時に5000個以上の真赤な実をつけている姿を紹介することができた。
  野澤さんになぜこんな“奇跡”のような事ができたのかの詳しい説明は、映画を御覧いただきたい、と思う。
  89年の7月、種植えを開始するにあたって、野澤さんは私に次のような事をおっしゃった。
  「技術的には何の秘密もないし、難しい事もないんです。ある意味では誰にでもできます。結局一番大切なのは育てている人の心です。成長の初期段階でトマトに、いくらでも大きくなっていいんだ、という情報(十分な水と栄養があるんだという情報)を与えてやりさえすれば、後はトマトが自分で判断します。トマトも“心”を持っています。だから撮影の時にはできるだけトマトと心を通わせ激励してやって下さい」
  この話を聞いた時、私は「トマトも“心”を持っている」という事についてはごく素直に受け止めることができた。しかし、そのトマトと心を通わせる、とはいったいどうすればよいのだろうか。「トマトさん、こんにちは、お元気ですか、今日もまたよろしくお願いします」などと声をかければよいのだろうか。ただでさえ一家言あるひねくれ者が多い撮影のスタッフの前で、私がトマトにブッブツ話しかけたり、ましてスタッフ全員にそんな事を強制したりすれば、「降ろしてもらいます」と言い出す者が出て来ても不思議はない。だからといって野澤さんのおっしやる事は、撮影を成功させるためには決して無視できない。
  撮影の初期段階では私はいつもスタッフより一足早く温室に入り、彼らが準備をしている間に密かに、声を出さずにトマトに話しかけていた。ところが撮影が進むにつれてスタッフの中にも変化が現れ始めた。実際数カ月間をおいて久し振りでトマトに会ってみると、その成長ぶりには思わず声を上げるほど感勤してしまう。つい「いやあ、お前デッカクなったなあ、エライなあ」なんて声を出して言ってしまう。皮肉屋のカメラマンまでが「スマン、今日はちょっとライトを当てるけど気にしないで」なんて言うようになった。こうしてトマトに話しかける事はスタッフの間でごく自然な事になった。
  トマトの成長がそろそろ絶頂期を迎えようとする頃だった。突然イタリアの登山家メスナーから連絡が入り、予定が変わったので今すぐ撮影に来てくれという。トマトの事が多少気にかかっていたが私達はとりあえずイタリアに向かった。イタリアに着いて間もなく、今度は野澤さんの方から電話が入った。トマトの成長がそろそろ限界に来ている、というのだ。真赤に熟したトマトが温室いっぱいに実っている光景は、この映画のクライマックスにとって絶対不可欠なシーンだ。
  私はいつ頃が限界なのかを野澤さんにたずねた。彼が指定した期日は私達が帰国できる日の10日も前だった。メスナーの撮影を途中で中止するわけにはいかない。だからといって、帰国した時、たわわに実ったトマトが無くなってしまっていたら映画全体が台無しになる。もちろん、代役を立ててカメラを回せばトマトを撮ることはできる。しかしここまで撮って来たトマトの最後の姿を他人に撮らせるのでは、トマトに申し訳が立たない。
  もし本当にトマトに“心”があるのならこの私の苦悩がわかってくれるに違いない。こんな常識はずれな事に賭けてみるのも『地球交響曲』らしいやり方ではないか。そう思った私は、イタリアからトマトに毎日念を送りながらメスナーの撮影を済ませた。帰国してすぐ、家にも帰らずスタッフを連れてトマトを訪ねた。
  トマトは待っていてくれた。生い繁る緑の葉の中に、熟し切った5000個の真赤なトマトが実る姿は、『地球交響曲』の最後を飾るのにふさわしく、実に美しく見事だった。
  トマトの撮影を終え帰宅した次の日、夕方5時頃の事だった。また野澤さんから電話が入った。
  「龍村さん、昨日温室で変な事があったんです。真夜中に温室の中から奇妙な音が聴こえるので、当直のと者が覗きに行ったんです。するとなんとあの5000個のトマトが間断なくボタボタと落ち続けているんです。奇妙な音はその音だったんです。そして今日の昼頃にはほとんど全部落ちてしまいました。写真を撮りましたのでお送りします」
  送られて来た写真は、その前日とは似ても似つかね、生い繁る緑の葉だけになったトマトの姿だった。写真には野澤さんの短いコメントが添えられていた。“私は何度もトマトの巨木を育てて来ましたが、たった一晩で全部の実が落ちてしまったという経験は初めてで驚いています”。科学者である野澤さんは、決して非科学的だと思われるような物の言い方はされない。ただ、こんな事実がありました、と客観的に示されただけだ。しかし野澤さんが言いたかった事は手にに取るようにわかる。
  「トマトはあなた方の帰りを必死で待っていたんです。そして自分の使命がようやく終わったと思ったとたん、ハーツと息を抜いて一気に全部落ちたんでしょう。今回は撮影のために生きたんですから」
  こんな風に書くと、それはあまりにも考え過ぎだと思う人もあるかもしれない。確かに今の私達はトマトに“心”があると証明する科学的方法を持っていない。だいたい“心”そのものが最も科学的説明のできないものだ。だから、この事実もやはり“単なる偶然”と考える人がいても当然だろう。しかし“単なる偶然”と思うか“トマトは知っていたかも”と思うかで一つ大きな違いが生まれる。それは私達の心に起こる喜びの度合いの差である。“単なる偶然”なら、せいぜい“運が好かったね”という程度に終わってしまう。ところが“ひょっとしてトマトは知っていたかも‥‥”と思うなら、限界を10日も過ぎて待っていてくれたトマトに出会った時、心が湧き立ち心の奥底から“ありがとう”と言いたくなる。そして自分自身がとても幸せになる。それがまたトマトに伝わり、あり得ない“偶然”をつくるのかもしれない。

●ミニ解説●
  映画「ガイア・シンフォニー(地球交響曲)」の第一作を飾ったトマトの巨木にまつわる裏話です。「植物(トマト)にも“心”がある」という考えを、あなたはどう受け止めましたか? 私は真っ直ぐうなずいてしまいます。私自身もそのことを実感するような体験をいくつか持っているからです。ということで、この地球に生きとし生けるものにはすべて“心”が宿っていて、いま密かに魂の昇華の準備をしていると考えるほうが正しいような気がするのです。                  (なわ・ふみひと)

2016年6月8日水曜日

日銀の国債買い入れは国家破産の下準備

■国家破産

 これから世界で起きること ただちに日本がすべきこと

 吉田繁治・著  PHP研究所


 日本で財政破産が起こったときの仮想風景

 米国のノーベル賞経済学者クルーグマンは、デフレを終わらせ、日本の期待インフレ率を高めるためには、日銀が国債を買って、いくらでもマネーを刷ればいいといまも主張しています。レスター・サローも同じ主張ですが、これらは、以下の展開をみない無謀な論です。

 クルーグマンのすすめで、日銀が「債券市場から国債を物価が上がるまでいくらでも買う」という姿勢を見せれば、
 ①債券市場では国債価格の下落を恐れた売りが殺到して金利が上がり、
 ②満期が来る国債も、日銀引受けを迫られるでしょう。
 この結果は、どうなるか?
 借換債158兆円、新規債40~50兆円で、1年に200兆円くらいの「1万円札の発行」になる可能性もあります。200兆円が金融機関の当座預金(金利ゼロ)に貯まります。金融機関は、金利ゼロのマネーを200兆円ももてば、赤字になります。
 このため、なにかで運用しようとする。企業への貸付は、リスクが高い。国債は下落リスクがあるので買えないとなると、投資信託やヘッジ・ファンドへの預託、または金利がつく外貨預金でしょうか。
 こうして日銀が刷った日本円の膨大なマネーが、海外に流出します(キャピタル・フライト)。円の海外流出は円売り・ドル買い、またユーロ買い、元買いなので、為替市場で、円は暴落します。
 円暴落の気配があれば、海外が日本にもつ債券(日本の株や国債)の312兆円は、大挙して売られます。遅れれば、円安差損の損をするからです。
 円債券を海外から大きく売られた日本の金利はいっそう上がって(10%以上か?)、950兆円規模の既発国債の価格と株価は、再び底なしに下がるでしょう。国債を買う日銀も、バランス・シートに埋めきれない巨大な損失をかかえます。信用を失った日銀が発行する円の価値は、下がるのです。

 1%の円10年債の期待金利が、ギリシア、ポルトガルのように10%に上がるとどうなるか。
[国債を含む債券価格=(1+額面に対する表面利率×残存期間)×100÷(1+期待長期金利×残存期間)」です。[国債価格=(1+1%×10年)X100÷(1+10%×10年)=110÷2=55]です。国債価格は45%も下落し、まぎれもない国家破産です。
 国債をもつ金融機関は、一斉に全部つぶれ、預金取付けが起こります。1年50兆円の公的年金が払えない。35兆円の公的医療費も支払えず、40兆円の全公務員給料はもちろん払えない。国債の45%の下落で、400兆円規模の損失が生じるからです。ソ連崩壊(1989年)のとき起こったことがこれでした。

 このとき、日経平均はジェット・コースターのように下がり、5000円以下でしょうか。
 $1=200円という円安に回帰するかもしれません。輸出は、徐々に増えるでしょうが、輸入の資源がいまの3倍に向かって上がります。貿易は赤字になります。これが、所得増のないインフレ、つまりスタグフレーションを生みます。

 一般にいえば、通貨価値の下落は、ハイパー・インフレに向かう物価の高騰です。しかし10年代の経済では、戦後にあったような、物価が10倍、100倍、300倍に上がるハイパー・インフレは起こりません。
 先進国での国家財政の破産を、即、ハイパー・インフレとする多くの論は、世界の商品供給力が増え、グローバルなコンテナによる商品流通が急増したことをみない粗雑な俗論です。500兆円ものマネー(購買力)が日々、巨大に移動し、商品も高速で国境を越えるグローバル化した経済では、60年前の資本にも商品にも移動の障壁があった時代とは、根本的に異なるのです。

 インフレの性格が異なる

 新興国の工業化と、先進国での生産力余剰があって、消費者物価は上がりにくい。ハイパー・インフレになるのは、たとえば戦争で、工場、農地、商品流通が破壊され、必需の商品や食品需要を満たせないときです。
 ただし、供給量に限界がある資源・エネルギー・穀物・食品等の基礎生活物資は、財政破産を起こした国にとって数倍の価格に高騰するでしょう。

 通貨が2分の1に下がった国の輸入物価は2倍に上がるので、それを原因にした商品インフレは必ずありますが、ハイパー・インフレとはいえません。ハイパー・インフレは物価が10倍以上です。
 わが国で国家の財政破綻があったときの消費者物価のインフレは50~100%と想定します。不動産も、10年後の人口が大きく減らない地域では、2倍の価格になるでしょう。

 政府部門は、財政が破綻すると、400万人の公務員を100万人以上削減し、給与水準を70%におさえる削減を図らねばならなくなります。

 債券市場が国債を買わないこと、あるいは国債先物が売られることによる国家財政の破産は、将来の日本のために悪いことだけではない。避けるべきは、日銀が財政破産を避ける目的で国債を買うマネーを刷り続ける量的緩和の継続から起こる、ハイパーに近いインフレです。これは国債と金融資産の価値を紙くずにします。

 国家財政の破産は、官僚組織(国家+地方+独立行政法人)の財政破産です。この世の終わりではない。公務員は給料が減らされ、定員が削減され、年金と公的医療費、および社会福祉費が減って、増税に向かう変化です。これは選択肢ではない。そうせざるをえないのです。

 戦争とは違い、信用危機・恐慌は、工場、店舗、オフィス、ホテル、レストラン、インフラ設備、国土と自然、そして人材と技術は残ります。街の外見は変わらない。海辺の街を一瞬で瓦礫にした悪夢のような、人々の命を根こそぎ奪う津波ではない。大震災と原発を経験した日本人にとって、これ以上にこわいものはない。3・11にくらべれば、たかがお金です。国家財政破産があっても、悲観しないことです。

なわ・ふみひと ひとくち解説
  本書で特に参考になると思う内容を以下にピックアップしました。それぞれに私のコメントをつけていますので、ぜひ参考にしてください。

●国債をもつ金融機関は、一斉に全部つぶれ、預金取付けが起こります。1年50兆円の公的年金が払えない。35兆円の公的医療費も支払えず、40兆円の全公務員給料はもちろん払えない。

 国債が暴落すれば、たくさんの国債を保有している銀行や保険会社等は倒産し、預金の取り付け騒ぎが起こるのは避けられません。政府は混乱を鎮めるためという理由で堂々と「預金封鎖」を実施するでしょう。国民は預金を下ろすことはできなくなるのです。その間にインフレが進めば、お金の価値はどんどん暴落していきます。ですから、国家破産は「国民破産への道」と考えておく必要があるのです。

●ハイパー・インフレになるのは、たとえば戦争で、工場、農地、商品流通が破壊され、必需の商品や食品需要を満たせないときです。
ただし、供給量に限界がある資源・エネルギー・穀物・食品等の基礎生活物資は、財政破産を起こした国にとって数倍の価格に高騰する

 日本が国家破産したあとに首都直下地震、南海トラフ地震、あるいは富士山の噴火等によって工場や農地、商品流通など社会のインフラが破壊されたとしたらどうなるでしょうか。それこそ戦後と同じかそれ以上のハイパー・インフレに見舞われることになるでしょう。私が予測する「日本沈没」のシナリオです。

●避けるべきは、日銀が財政破産を避ける目的で国債を買うマネーを刷り続ける量的緩和の継続から起こる、ハイパーに近いインフレです。これは国債と金融資産の価値を紙くずにします。

 「国家破産」の影響について、どちらかと言えば楽観的な著者ですが、現在日銀が行なっている「国債を買ってマネーを刷り続ける量的緩和」はハイパー・インフレを起こし、国債と金融資産(株や銀行預金など)を紙くずにすると述べています。政府・日銀はすでにルビコン川を渡ったのです。国家破産後のハイパー・インフレによって国債が紙くずになる日が近づいています。

●公務員は給料が減らされ、定員が削減され、年金と公的医療費、および社会福祉費が減って、増税に向かう

 公務員の給料や定員が減らされることには、国民の多くは歓迎するかも知れません。ただし、警察や消防などが十分機能しなくなることは社会不安を増大させます。街に失業者が溢れ、今日食べるものに事欠く人たちが増えていけば、日本社会も外国並みの治安の悪化は避けられないでしょう。もちろん、私たち自身が失業し、あるいは年金を減らされてしまって、いつ路頭に迷うことになるかも知れません。
 現在のアメリカのように、国家破産もしていないのに、リーマンショック以降4,000万人を超える人たちが、政府が支給するフードスタンプ(低所得者に向けた食料費補助制度)によって食いつないでいるような社会が訪れることも覚悟しておく必要があるでしょう。

●戦争とは違い、信用危機・恐慌は、工場、店舗、オフィス、ホテル、レストラン、インフラ設備、国土と自然、そして人材と技術は残ります。街の外見は変わらない。

 現在、日本はアメリカから戦争を仕掛けられているのです。ただ、戦争といっても、その武器は爆撃機や戦車、戦艦などではありません。今日の戦争は経済戦争、情報戦争、そして気象兵器による戦争なのです。
 アメリカは早くから(1990年ごろから)日本に経済戦争を仕掛け、まもなく日本の国家破産を実現させようとしています。そして、その次は人工地震・津波、さらには富士山の噴火等の気象兵器によって、文字通り日本という国を世界地図から消し去ってしまおうとしている、というのが私の分析です。
 地震や津波に襲われれば、街の外見は変わります。工場も、店舗も、オフィスも、レストランも、国土と自然も破壊され、多くの人材と技術も失われることでしょう。
 そのようなアメリカ(を裏から支配する層)の攻撃に日本国民が気づかないように、マスコミを使った巧妙な情報戦によって、日本人の関心を逸らしていると思われます。まずは、国家破産が近づいていることに気づかないように、そして、そのあとに人工的な自然災害を起こしても、それは純粋な天災だと思わせるように……。
 「原発の再稼働に賛成か反対か」とか「集団的自衛権に賛成か反対か」と、国民の関心を別のテーマに向けさせながら、国民を路頭に迷わせる国家破産とハイパー・インフレの危機が近づいていることを隠しているのがわかります。戦時中と同じように、操られたマスコミを使っての情報戦で、国民はいとも簡単に煽動されるのです。




2016年6月2日木曜日

首都直下地震で東京は壊滅する?

■巨大地震Xデー


藤井聡(内閣官房参与・京都大学大学院教授)・著  光文社


 まえがき

 「巨大地震によって、この国が如何にして潰れるのか」をイメージせよ!

 今、多くの日本人は、首都直下地震や南海トラフ地震といった「巨大地震」が、いつ起きても仕方がない状況にあることを、頭では理解している。
 テレビニュースや新聞では時折、「巨大地震の被害は220兆円」「死者は32万人にも上る」といった凄まじい水準の数字が踊っているので、それを目にしたことがある人も多いだろう。
 しかし、そんな恐ろしい数字がどれだけ報道されようとも、その数字が意味する内容を、実感をもって心ではっきりと理解している人は逆に、極めて少ないのではないかと思う。
 いわば、巨大地震というものを、どこか「人ごと」のように感じているのが、現代の平均的な日本人なのである。
 何事においても、人間というのは、「頭」で分かっていても「心」で分からなければ何もしない生き物だ。
 だから、今の状況が続く限り、人々は、巨大地震に対する備えを進めていかないのだろうと、筆者は感じている。
 そしてその結果、「災害に備えるために、国力のすべてを振り絞って、日本を守らなければならない」という大きな世論のうねりが生ずることもないだろうと、思っている。なぜなら「いつ起こるか分からないことに、様々な資源を大規模に投入する」ことを、国民は許さないだろうからである。

 ――残念としか言いようがない。

 例えば、「気を抜いているとき」に後ろから殴りかかられると、取り返しの付かない大けがを負ってしまうが、「身構えて」さえいれば、たいしたけがにはならない。「備え」というものは、仮にそれがわずかであっても、被害を随分と軽減するものなのである。

 だから、〝このまま〟では地震の被害は、何倍、何十倍にも膨らんでしまうことは、火を見るよりも明らかなのだ。
 多くの人々の命が失われると共に国内産業は激甚被害を受け、日本経済は長期的に低迷し、街は失業者であふれる。復旧のための出費はかさむ一方で、低迷する経済の中で税収は極端に減ってしまい、財政は今とは比べものにならないくらいに悪化する……。
 財政規律を守ることにあまりに固執すると、将来の財政悪化をもたらすのである。「短期
的な合理性」の追求が、「長期的な合理性」を著しく損なわせると言い換えてもいい。
 それは丁度、事故を起こすことがほぼ確実だと言われているドライバーが、日頃の出費を抑えるために自動車保険に入らないようなものだ。彼は月々数万円の出費を削ったために、いざことが起こってしまうと、何千万円、何億円という借金を抱え、生涯、その借金に苦しみ続けるのだ。彼は、二度と以前の「普通の暮らし」には戻れない。
 筆者は、我が国もまた、この不幸なドライバーのように、十分な備えをしないままでいれば、早晩起こる巨大地震によって、今のような「普通の暮らし」がもう2度とできない国になってしまうであろうことを、ほとんど間違いのないことと予期している
 なぜなら筆者は今、安倍内閣の内閣官房にて、参与として日々、巨大地震によって如何なる深刻な事態が生じるのかを、様々な専門家と共に、様々な角度からシミュレートし続けているからである。
 そんな筆者から見れば、我が国の政・官・財・学におけるあらゆる取り組みのすべてが、哀しいかな、「滑稽」に見えて仕方がないのだ。巨大地震により巨大な被害が生ずることが確実であるにもかかわらず、皆でよってたかって、集団で、その迫り来る危機を無視し続けているからである。
 それはさながら、川の水が急激に増えて、水没することが明らかな川の中州で――数分後に自らの命が奪われることを知らずに――冗談を言い合いながらバーベキューを楽しんでいる若者グループのようだ。

 それは哀しくも愚かしい、集団心理の悲喜劇だ。
 筆者は、どうにかして、国家レベルのそんな悲喜劇を回避したいと、心から願っている。

 こうした最悪の未来を避けるために必要なことは、たった1つしかない。
 1人でも多くの国民が、巨大地震が起こったときに、何が起こるのかを深く「想像」することだ。
 災害の悲劇は、想像力の欠如がもたらす。
 中州の若者達の悲喜劇も、彼等の想像力の欠如がもたらすものだ。彼等に、自分が死ぬことを想像する力さえあれば、いともたやすく自らを救えるはずなのだ。
 だから今の日本も、「巨大地震によって、この国が如何にして潰れるのか」ということを、
多くの国民が正確にイメージできさえすれば、救われるのである。

 本書は、1人でも多くの国民に、来たるべく「巨大地震Xデー」に一体何が起こるのかを、あらゆる側面にわたって深くイメージしてもらうことを祈念しつつ書いたものである。
 それは、今、安倍内閣で進めている「国土強靭化」と呼ばれる行政の中で、内閣宮房を中心にあらゆる省庁と一緒に、何力月にもわたって徹底的に行なった作業に基づいている。
 だからその内容は、現時点の我が国の、危機管理における最高峰、最先端のものといって差し支えない。

 筆者はこの本を通して、1人でも多くの国民に、「巨大地震によって人が如何にして死に
得るのか」「この国が如何にして潰れ得るのか」を、しっかりとイメージしてもらいたい。
 イメージすることが、そして唯一それだけが、国民1人ひとりの命を守り、この国を守る最強の力を、私たちに与えてくれるのである。

 Chapter 1 今そこにある危機を再認識せよ!

 国民もイメージを共有し始めた「巨大地震」の危機

 3・11の東日本大震災は、2万人近くもの方々の命を奪い、数多くの街々に巨大な被害をもたらした。同時に、私たち日本国民に、我々が暮らしているこの日本列島には巨大な自然災害の危機が常に潜んでいるという「現実」を、まざまざと見せつけた。
 そして――忘れかけていた深刻な危機を思い起こさせた。

 「南海トラフ地震」と「首都直下地震」だ。

 多くの国民は今、どうやらこれらの「巨大地震=メガクエイク」が身近に迫っているらしい、という認識を共有しつつある。そして、それらは、何十万人という人々の命を奪い、何百兆円という巨大な経済被害をもたらすものなのだというイメージを、おおよそつかみつつあるように思う。
 実際、政府は今年(2013年)3月に、南海トラフ地震について、科学的な推計に基づき、東日本大震災の10倍を超える規模の被害が生ずる可能性を公表している。
 (中略)

 「国土強靱化」で、あらゆる危機を「強く、しなやかに」凌ぎきる

 「国土強靱化」をひと言で言うなら、それは、「国家の危機管理」のことである。
 つまり、巨大地震をはじめとする様々な国家的な危機を乗り越えるための取り組みそのものが、国土強靱化なのである。
 あるいは、軍事的な安全保障との対比で言うなら、それは「経済社会的な安全保障」とも言うことができる。
 一般に「安全保障」という言葉は、近隣諸国等との軍事的紛争に関連するものとして用いられているが、何も、国家の安全を脅かすのは軍事的脅威だけではない。巨大地震もまた、国家の経済や社会の安全を脅かす巨大な脅威である
 そうした視点に基づく国家的な危機管理や安全保障を図るために、一体何をすべきかを徹底的、かつ、総合的に考え、そのうえで、あらゆる危機を「強く、しなやかに」凌ぎきるために求められるあらゆる取り組みを進めていこうとするのが、国土強靭化の考え方なのである。

 「国土強靭化」は全分野、全省庁にまたがる「オールジャパン」の取り組み

 そんな強靱性を国家レベルで確保し、「ナショナル・レジリエンス」(国家強靱性)を高めていくには、実に様々な取り組みが求められている。
 例えば、国民が皆、巨大地震について無知であれば、巨大地震Xデーには、国民は全くの「無防備」のまま、その巨大な破壊エネルギーの直撃を受けてしまう。したがって、国土強靭化のすべての基本は、1人でも多くの国民や組織、法人に、「今、そこに、巨大地震の危機が迫っている」という認識を持ってもらうことなのである。
 一般的にこうした危機意識を、正しく国民に持ってもらうための取り組みは「リスク・コミュニケーション」と呼ばれている。この対策を進めるためには、文部科学省を中心とした政府の関係部署が、国民と直接コミュニケーションを図り、教育を徹底的に進めていく必要がある。
 あるいは、巨大地震の際には様々な工場が被害を受ける。そして、その被害は、蜘蛛の巣のように張り巡らされた「サプライ・チェーン」を通して日本中、さらには世界中に深刻な水準に増幅していく。この問題に迅速に対処しなければ、日本経済の心臓部・東京を襲う首都直下地震の被害は、日本経済に、2度と回復できない水準の被害をもたらしかねない問題となる。
 それを食い止めるには、経済産業省を中心とした関係部署による対策が、どうしても求められる。
 経済産業省と言えば、巨大地震Xデーにおけるエネルギーの安定供給という重大な責務を持っている。石油、ガス、そして、電力が、Xデーにおいて途絶えてしまえば、日本経済は、極めて深刻な被害を受けることとなる。
 さらには、Xデーにおいては、何百万人にも上る負傷者の発生が危惧されると同時に、多くの人々がガレキの下敷きになり、そして、被災地のあらゆるところで火災が発生する。そこで求められるのは救援であり消火活動である。この活動のためには、警察、消防、自衛隊、海上保安庁等の様々な組織の力が必要となる。
 そうした救援活動をはじめとした、Xデーにおいて必要とされる膨大な量の対応を進めるためには、関係諸機関の間の「通信」が使える状態となっていることが不可欠である。
 しかし、Xデーにおける被災によって、それは必ずしも保証されるものではない。この点の対策には、総務省の事前の取り組みが是が非でも求められている。
 その他、Xデーには膨大な量の医療需要が発生するが、その対策のためには厚生労働省の力が必要であるし、食料に関する工場の大規模被災やサプライ・チェーンの断裂で、「食料不足」が被災地内部のみならず日本中で懸念されているが、これについては農林水産省の力が必要である。
 あるいは、膨大な金融データが、万が一にも被災し、消滅してしまえば、日本経済、ひいては世界経済に及ぼす金融、経済上の被害は、想像を絶するほどに甚大なものとなろう。したがって、この懸念のためには、金融庁の取り組みも不可欠である。
 そして最後に、以上の様々な取り組みのためには、実に様々なインフラが、Xデーにおいても機能していることが必要不可欠である。したがって、インフラを所管する国土交通省の様々な取り組みが求められていることも間違いない。
 すなわち、巨大地震を想定した国家の危機管理のためには、経済、医療、食料、エネルギー、インフラ、消防、自衛隊、学校教育、情報通信、産業、金融といった、日本国内のありとあらゆる領域における取り組みが必要なのである。



なわ・ふみひと ひとくち解説
  私が共感する内容が非常に多い本です。その中でも、特に注目が必要と思われるポイントを抜き書きして私のコメントをつけました。

●「巨大地震の被害は220兆円」「死者は32万人にも上る」

 早くから首都直下地震と南海トラフ地震を予測しているアメリカ国防総省は、この2つの地震による日本人の死者を2,000万人と予測しているのです。この違いはなぜでしょうか? アメリカが予測する2,000万人は、日本のどこに住む人たちを計算に入れているのでしょうか?


●巨大地震というものを、どこか「人ごと」のように感じているのが、現代の平均的な日本人なのである。

 東京に住んでいなくても、首都直下地震で首都が崩壊すれば、日本人はすべて塗炭の苦しみを味わうことになります。日本列島に住んでいるすべての日本国民にとって、決して「人ごと」ではないのです。


●今の状況が続く限り、人々は、巨大地震に対する備えを進めていかないのだろう。

 既に著者は「日本人は巨大地震に対する備えをしないだろう」と諦めているようです。


●その結果、「災害に備えるために、国力のすべてを振り絞って、日本を守らなければならない」という大きな世論のうねりが生ずることもないだろう。

 だから「地震対策をしっかりやれ!」という世論のうねりは生まれないだろうと、藤井氏は嘆いています。「残念としか言いようがない」と。


●〝このまま〟では地震の被害は、何倍、何十倍にも膨らんでしまう。

 「地震対策をしっかりやれ!」と世論が沸騰しなければ、当然対策のレベルは〝このまま〟でしょう。その結果、地震の被害は予測の何十倍にも膨らむことになるのです。


●多くの人々の命が失われると共に国内産業は激甚被害を受け、日本経済は長期的に低迷し、街は失業者であふれる。

 地震や津波で多くの人の命が奪われることも問題ですが、日本経済が根底から破壊されることで、地震後、街には失業者やホームレスの人たちがあふれかえることになるというのです。当然、治安も悪化すると思われます。


●早晩起こる巨大地震によって、今のような「普通の暮らし」がもう2度とできない国になってしまうであろうことを、ほとんど間違いのないことと予期している。

 日本は敗戦後、国土が焼け野原となった中から奇跡と言われる復興を遂げましたが、今回はもう「普通の暮らし」はできなくなるでしょう。世界の最貧国の仲間入りをするからです。というより、「日本」という独立国家は消滅し、国連(実質はアメリカ)による信託統治国になるのは間違いないと思っています。それが私の言う「日本沈没」の姿なのです。


●それは哀しくも愚かしい、集団心理の悲喜劇だ。

 「赤信号みんなで渡れば怖くない」というのが集団心理です。周りの人たちが地震に備えていないことで、なんとなく安心してしまう心理でもあります。「死ぬ時はみんな一緒だから」と思って自分を慰めるのです。哀しいことですが……。


●東日本大震災の10倍を超える規模の被害が生ずる。

 4年以上経っても東日本大震災の復興はまだほとんど手つかずの状態です。その10倍規模の被害があれば、国家が破産するのは避けられません。しかも、首都が崩壊することで国家として機能することはできなくなり、日本国民はアメリカをはじめとする外国の救援で細々と生きるしかない状態になってしまうでしょう。


●何も、国家の安全を脅かすのは軍事的脅威だけではない。巨大地震もまた、国家の経済や社会の安全を脅かす巨大な脅威である。

 実は、首都直下地震も南海トラフ地震も「地震兵器」による攻撃なのです。攻撃を仕掛けてくる相手が同盟国・アメリカ(を裏から支配する層)なのでたちが悪いのです。詳しくはぜひ拙著『日本沈没最終シナリオ』をお読みください。


●巨大地震の際には様々な工場が被害を受ける。そして、その被害は、蜘蛛の巣のように張り巡らされた「サプライ・チェーン」を通して日本中、さらには世界中に深刻な水準に増幅していく。この問題に迅速に対処しなければ、日本経済の心臓部・東京を襲う首都直下地震の被害は、日本経済に、2度と回復できない水準の被害をもたらしかねない。

 首都直下地震と南海トラフ地震、さらには富士山の噴火によって、日本の「サプライ・チェーン」は見事に破壊されます。日本経済が再び回復することはないでしょう。そもそも、日本をそのような状態に陥らせることがアメリカ(を裏から支配する層)の目的なのですから。


●Xデーにおいては、何百万人にも上る負傷者の発生が危惧されると同時に、多くの人々がガレキの下敷きになり、そして、被災地のあらゆるところで火災が発生する。

 阪神淡路大震災のときも、建物の倒壊などによって道路が寸断され、消防車が火災現場に駆けつけることはできませんでした。日本一の人口密集地である東京が巨大地震に見舞われれば、道路は車で溢れ、また至る所で火災が発生しますので、何日間も救援は来ないと考えておく必要があります。道路上の車に火が付けば爆発が連鎖し、火災が次々と広がっていくと思われる点が、先の関東大震災のときとは大きく違っています。


●食料に関する工場の大規模被災やサプライ・チェーンの断裂で、「食料不足」が被災地内部のみならず日本中で懸念されている。

 食品工場が被災しなくても、商品の受発注や流通システムが壊れるのは避けられませんから、日本国内に食料を届けることはできなくなります。深刻な食料危機を覚悟しておく必要があるでしょう。まさに、「大本神諭」や「日月神示」で予言されているとおりの状況が生まれるのです。


●膨大な金融データが、万が一にも被災し、消滅してしまえば、日本経済、ひいては世界経済に及ぼす金融、経済上の被害は、想像を絶するほどに甚大なものとなろう。

 日本経済の崩壊により、世界大恐慌を引き起こすことになるのは避けられません。既に崩壊寸前の中国経済のバブルもはじけ、世界中が大動乱に巻き込まれることになるはずです。


●様々なインフラが、Xデーにおいても機能していることが必要不可欠である。

 必要不可欠な様々な社会のインフラですが、電気が止まるだけてすべてが機能しなくなります。もちろん、通信手段のスマホや電話も使えなくなり、日本の中で何が起こっているのかを知ることもできなくなるでしょう。いまのまま、十分な対策がされなければこうなる――ということを藤井氏は警告しているのです。しかし、日本がそのような対策をとるはずはないと、すでに諦めていることがわかります。
 藤井氏が内閣参与の立場でいくら地震の恐怖と対策の必要性を強調しても、日本人の多くは、日々のスポーツニュースに関心を奪われ、東京オリンピックで金メダルが何個とれるかといった話題に幻惑されていくことでしょう。そもそも、首都直下地震を世界中のマスコミが話題にしているというのに、当の日本人が東京オリンピックの準備のことで騒いでいる場合でしょうか。マスコミの意図的な目くらましによって、日本人の多くは、危機を認識する能力そのものを失っているとしか思えません。
 が、それでも私は一縷の望みを持って、当サイトの読者のみなさんに「老いたオオカミ少年」として警鐘を鳴らし続けていくつもりです。

2016年5月30日月曜日

やがて日本も韓国社会と同じような悲惨な状態になる

■この世界でいま本当に起きていること

中丸薫×菅沼光弘   徳間書店


◆朝日新聞もアメリカの息がかかっている――菅沼

  歴史的な話になりますが、アメリカの対日政策とはなんだったのかをあらためて考えてみたいと思います。占領当初は、要するに「日本を弱体化するにはどうするか」という活動だったわけです。これまでにアメリカはいろいろなことを画策しましたが、その柱のひとつにマスコミ対策がありました。
  例えば竹村健一さん。彼はいまもアメリカの思惑通りに動いている。竹村さんは毎日新聞の英文毎日にいました。英語の勉強で、フルブライトの一期生として留学しました。
  だいたいアメリカは、なぜフルブライト交流事業を設けたのかと言えば、海外に親米派人材をつくるためです。あるいはアメリカの手先をつくるため、と言ってもいいでしょう。
  上院のフルブライト議員が資金を出して始めたわけです。対象となるのは日本だけでなくて、いろいろな国で同じようなことが行なわれています。
  フルブライト交流事業は戦後すぐに始まっています。これまでに世界中で30万人以上の人がアメリカで学んだことになるようです。日本では、1950年代初頭までに、フルブライトの前の制度でおよそ1000人がアメリカに留学。1952年からがフルブライト交流事業にあたり、竹村さんはその一期生です。
  1980年代からは、日本政府もお金を出しています。いまでは、公費で毎年日本人とアメリカ人がそれぞれ50人以上ずつ行き来しています。これらの同窓生は日本人で6000人を超えるようです。マスコミ人だけでなく、教育や行政、法曹界、ビジネス界に入り込んでいます。親米派を育てる目的で実施していますから、留学した人は好むと好まざるとにかかわらず、必ず親米派にさせられてしまうのです。
  彼らが日本に帰ってきたあと、例えばフジテレビならば『報道2001』というような人気番組にコメンテーターとして出演するわけです。まさに竹村さんの代表的な番組ですね。私も何度か報道2001に出演し、いろいろな話をしました。しかし、彼には自分自身の意見というものがないのです。経済なら、ロンドンの「エコノミスト」という雑誌に書いてあることをそのまま自分の意見として言っていましたね。しかも、中国やロシアの批判はしますが、アメリカの批判はまったくしない。
  報道2001で司会をしていたのが、黒岩祐治・現神奈川県知事です。私がテレビに呼ばれていた頃は、黒岩さんが司会を担当していました。彼は、番組の流れを親米寄りに引っ張っていくのです。
  その黒岩さんも一度番組を降りてフジテレビのアメリカ支局へ行ってしまいました。そのあと、帰国して再登板します。日米を行き来して、また新たな情報を仕込んできて、日本でも新たな親米派のコメンテーターをアレンジして報道番組を作るのです。換言すれば日本人の顔をしたアメリカ人をテレビに並べて、アメリカ寄りの情報を発信するわけです。
  イメージしにくい方もいるかもしれませんが、いまでは朝日新聞もアメリカ寄りの情報を発信することが当然のことになっています。朝日も、元朝日新聞主筆の船橋洋一さんがアメリカへ行ったでしょう。彼が朝日の親米化を進めました。

◆マスコミの自虐報道が日本人を変えてしまった――中丸

  実際のところ日本のマスコミは完全に掌握されていると言ってもいいでしょう。CIAの息のかかったコメンテーターたちは、アメリカの批判はしません。それではなんのためのコメンテーターなのでしょうか。
  2001年に私が北朝鮮から帰ってきたとき、フジテレビの『報道2001』が、私に30分間のコーナーを用意してくれたことがありました。そこで、北朝鮮のありのままを話し始めて、北朝鮮にとってイメージのよい話が出てくると、私の話を遮るか、コマーシャルを挟んでくるという……。
  日テレ系列のラジオ日本で長くパーソナリティーを務めていたミッキー安川さんの番組に出たときのことです。彼は忌憚なく質問してくるタイプの方でしたので、それにいろいろ真正面からお答えしていたのです。ところが、あとでその番組を聴いていた人に感想を聞くと、私が話していて、もっと聞きたいところになると、音楽が流れ始める。先ほどのテレビ番組と同じように、北朝鮮のポジティブな話になると、横槍が入るんです。
  そういえば、私も黒岩さんがMCだったときの『報道2001』に出演したことがあります。やはり親米の司会進行でした。
  小泉政権のとき、マスコミはアメリカの言うこと以外は書かなくなりました。あのときは本当にはっきりしていました。下手なことを書くと潰されそうでしたからね。特に日本経済新聞が偏ったと思います。
  要するにグローバリズムの先兵ですわ。アメリカが、日本の金融制度、経済政策などを変えなければいけないとなると、アメリカにとっては、日経新聞から情報を発信するのが手っ取り早いのです。経済界では皆、日経を読んでいますから、日経を読んで「そうか、こうか」と納得してしまうわけです。
  菅沼さんも指摘されていましたが、船橋洋一さんは闇の権力の討議機関、三極委員会の委員にもなっていますね。ですが、元々は朝日新聞もアメリカに牛耳られていたのですよ。
  例えば朝日新聞、毎日新聞や多くの地方紙はリベラル系の論調を持っていますが、彼らも戦前は、日本の参戦を煽り、戦争中は国民に勝利の幻想を抱かせていました。戦争を煽ったというだけで、軍産複合ビジネスに加担している可能性かあると言わざるを得ませんが、戦後は一転。反省して、中国・韓国・北朝鮮寄りの記事を書いているように見えます。アメリカよりも、東アジアの平和に貢献しようとする新聞のように思われています。ところが、それは逆なのです。
  リベラル系の新聞も、戦前から、まさにアメリカ及びそのバックにいる闇の権力の意向をしっかり伝えています。何も変わっていません。リベラル系マスコミの場合、アジアを重視し、反米にも見えますが、実はそうではないという、手の込んだやり方で情報を発信しているのです。
  産経新聞は社長も務めた住田良能さんが編集局長だった頃から変わったように思います。その頃から、安倍晋三政権が成立する頃までに保守論壇の周辺で何か陰謀のようなものが渦巻いたようにも思います。そのひとつが新しい歴史教科書をつくる会の運動です。この運動の裏側でいろいろなことが動いたのではないでしょうか。
  同じグループのフジテレビの日枝久さんは、デイヴィッド・ロックフェラーの系列ですね。デイヴィッド・ロックフェラーの本が出たときに、彼は日本に来て出版記念会のような集まりを開催しました。このときに日枝さんが挨拶をしていましたからね。産経新聞も日枝さんの言うことは聞かざるをえない立場でしょう。キッシンジャー氏が来たときにも、一生懸命案内していましたね。
  新聞報道について具体的に言えることは、まず、普段から中国・韓国・北朝鮮を持ち上げる記事を書きます。一方で、日本を陥れる記事を書きます。こうなると、周辺国は日本の新聞がこう言っているではないか、我々は正しい、優れた民族だ、と勢いを増します。
  日本の国民は、自分たちは間違っている、大した国民じゃない、という思いを募らせていきます。戦後、日本人は、これらの自虐報道により、国際政治を強く主張できないという、おかしな癖がついてしまいました。特に高度経済成長期を担ってきた世代はそうでしょう。
  GHQが戦前の日本を否定して、戦後はますます闇の権力のよき下僕となるように様々な政策を遂行してきたわけですが、教育の面からは日教組を組織することで、それを実現させようとしてきました。この日教組とリベラル系のマスコミが足並みを揃えて自虐史観を子どもたちに植え付けてきました。

◆保守路線の産経新聞も親米派に成り下がった――菅沼

  情報の発信の方法が変わったという面があります。船橋洋一氏が日本に帰ってきてからしばらくして、2010年に新聞社を辞めました。それから朝日新聞もすっかりスタイルが変わったのです。表現が直接的なんですね。驚いてしまうくらい、朝日新聞も変わってしまいました。リベラル系新聞もかつては手の込んだ方法で自虐史観を打ち出していましたが、そういうスタイルか必要なくなったのは、時代の変化なのでしょうか。あるいは、リベラル姿勢で押す政策が行き過ぎたということなのでしょうか。親米ぶりが直接的になっている。
  そして、いま一番問題なのが産経新聞です。保守路線の産経がなぜこのようなまでに親米になってしまうのか。そこには経営的に苦しくなっていくマスコミ業界の事情も少しながら関係しています。
  1990年代から続く不景気はマスコミ業界の経営もどんどんと追い込んでいきました。いまでも広告は減り、読者も減る一方です。各社とも厳しい状況ですが、産経新聞もご多分に漏れず、住田良能さんが社長だった2007年頃から2009年頃まで大幅なリストラを敢行しました。記者もかなりクビを切られました。このリストラのときに反米保守の記者は切られてしまって、みんな親米保守ばかりになったという背景もあったのです。つまりメンバーがすっかり変わってしまったことでより親米か先鋭化し、エスカレートし続けているわけです。
  TPPにしても何にしても、アメリカのやることは全面的に賛成。それは産経新聞に限ったことではありません。日本の新聞は、もはや批評精神を失っています。「オール賛成」と言っても言い過ぎではありません。

◆道州制やTPPは、闇の権力のアジェンダです――中丸

  IMFと消費税について話を戻しますと、闇の権力とともに力の弱まっているIMFは、中川昭一さんを抹殺したあとも、性懲りもなく今度は消費税の増税により、日本の人々からお金を集め、闇の権力を支えようとしているのです。それが消費税増税の正体です。
  そのことがわかっていても、中川さんの抹殺のことなどもあり、もう闇の権力には逆らえないと政治家たちは思っている。だけど、消費税増税に突き進んでいく誇りなき政治家は選挙で落選させましょう。ちなみに野田佳彦さんの場合は、誇りがないどころか、アメリカとIMFがつるんで財務省を動かして首相を動かす構図です。IMFと消費増税とTPP。これら三つの大きな政治的選択についてどうしようとしているか、これは目安としてわかりやすいと思います。アメリカや闇の権力に何の目的があるのかを考えて、それに従おうとする政治家には票を入れないようにしなければなりません。反TPP、増税反対、脱原発を掲げる政治家は日本のことを考えていると思います。
  そうは言っても、既成政党の政治家はずいぶん迷っています。多分に勉強不足があると思いますが、真実を知らない国民もまだまだ多いですから、有権者の要望を聞いても迷ってしまうことは多いのだと思います。
  そんななか、橋下徹大阪市長のような人物が登場しました。まだその正体は確かには見えないのだけれど、頭脳も明晰で、家族思いで、若さやエネルギーもあるとあって、国民全体に期待させるような雰囲気も醸し出しています。
  そこで彼は信用できるのか。橋下さんはTPP賛成と言っていますし、道州制の導入も主張しています。残念ながら要注意人物だと認識せざるを得ないのです。
  道州制やTPPは、闇の権力のアジェンダです。特に恐ろしいのがTPPですね。これを受け入れれば、日本は息の根を止められるようなもの。橋下さんはそれを理解していないのではないかしら。
  さらに、闇の権力は、中国も9つぐらいに解体したいと考えています。
  日本は江戸時代、幕藩体制を採用していたため、行政は独立していました。幕末に、欧米の列強がそれぞれの藩に圧力をかけ、それが明治維新につながります。尊王攘夷派と佐幕派に分かれ、薩長も仲の悪い時期がありました。戊辰戦争を発端とする長州と会津の仲は、現代にいたっても解消されていない面があります。太平洋戦争が終了した際、北海道や沖縄を独立させようという動きもありました。
  しかしながら、日本は天皇制による君民共生の國體によって、根本がしっかりと結束していましたので、いずれのときもバラバラになることはありませんでした。だから日本の場合は道州制を導入しても大丈夫だという見方もありますが、その一方で、GHQが日本に与えた憲法により、家族や地域コミュニティの破壊が進んでいます。以前のように日本の結束力は強くありません。このうえ、さらに道州制を導入するのはリスクが高いのです。

◆自殺率で一万人に三人を超える韓国の異常さ――菅沼

  道州制は国家解体の思想です。さらに言えば、国家を解体へと招く政策です。私も中丸さんの考えに異論はありません。
  TPPについては、それがいったいどういうものか、中野剛志さんやいろいろな方が本を出していますね。
  日本の国民は愚かではありませんから、新聞の情報はおかしいのではないかということを感じ始めていて、TPPに参加することがよいとストレートに感じている人はいないと思います。国民側はTPPを推進しようという空気ではありません。単に農家が猛烈に反対しているというわけではありません。それは、多くの人が感じています。昨年の総選挙でも、TPP参加を声高に叫ぶことなどなかった。やはりそれは票が減るからですよ。いまとなってはもう政府は、TPP参加の方向へ向かってしまっています。
  TPPは、とにかく非関税障壁に対しては容赦なく攻撃することに注意しなければなりません。問題は、お米の関税などと矮小化して考えてはダメで、要するに日本という国をあらゆる意味で解体していくことを目的とした協定なのですから。郵貯、簡易保険、共済制度、医療制度。そのほか、日本の制度すべてを解体します。
  最後には非関税障壁と称して、日本語も問題となります。例えば地方自治体の事業も狙ってくるでしょう。地方自治体の六億円以上の公共事業にアメリカの企業も参入できるようになると、地方自治体のつくる入札関連の文書はすべて英語にしなければいけません。
  ちなみにTPPに二の足を踏んでいた日本政府に対し、アーミテージ氏はかつてこう言い放ちました。「TPPがダメならNAFTAに入れ」と言うのです。本音丸出しですよね。アメリカ、カナダ、メキシコの北米自由貿易協定です。そこへ日本も入れというわけです。それではまさに日本はアメリカの1州じゃないですか。そこまで言い出しました。メキシコなどもNAFTAの犠牲者です。
  話をTPPに戻しましょう。TPPによる市場開放を突き詰めていくとどうなるか。「日本語が最大の非関税障壁だから、公用語は英語にしなさい」と迫ってきます。現実に企業でそれを実施しているところも目立ってきました。先を行っているというべきか、アメリカの要求を理解している会社と言うべきなのか、楽天やファーストリテイリングが、会社内での公用語を英語にしている。すでに日本のなかで日本語が公用語ではなくなりつつあるんです。
  つまり、日本はアメリカの一州にされてしまうということです。アメリカと一体的な経済・文化・社会になれという指令を発しているのです。こうなれば、アメリカは日本を、アメリカ国内市場と同じように扱えるようになるわけです。アメリカにとっては、まさに障壁はなくなり、日本という優良市場での商売が格段にやりやすくなります。日本にとってみれば、先人たちが文化、伝統として決めてきたこと、育んできたものがすべてご破算になるということです。
  その事実を、政治家はキチンと知らないのだと思います。
  事実、野田さんはTPPについて何も知らなかったという話を聞いています。アメリカからの要求について報告は受けているのですが、「それはどういうことなのか?」と問うたというのです。自分では理解できないのです。うすうすわかっていても、TPPが日本の制度解体だと確信するのか恐ろしくて、わざとわからないふりでもしているのでしょうか。
  TPPを結べば、日本の社会はいったいどうなるか。いまの韓国を見ればわかります。韓国は、李明博前大統領がアメリカとの間でFTA条約に調印しました。そのために、韓国はどうなったでしょうか。
  あまり報道されていませんが、韓国社会はいま、大変乱れています。報道を見聞きしていると、韓国の企業は世界にシェアを伸ばし、調子がいいかのような印象ですが、実際の韓国経済はボロボロです。サムスンは儲かっていますが、ほかに儲けている会社は実はほとんどないのです。優良企業と言われていた会社の不良債権も相当溜まってきているようです。2012年の春から夏にかけては、貯蓄銀行が何行も潰れています。
  おまけに、実はサムスンは韓国企業ではありません。外資のものです。54%が外国の株主です。どんなに儲けても、利益は全部彼らの手に渡っていきます。
  一方、韓国の社会情勢はどうなっているか。これがものすごい格差社会になっているのです。実際の経済は疲弊していますから、若者の就職口がありません。就職口がないために、彼らが社会を乱し、治安悪化を招いている状態です。
  韓国の新聞にも書かれていますが、性犯罪も残酷極まりない。20代の若者が、自宅で睡眠中の7歳の女の子を布団ごと引きずり出して持ち出し、暴行して腸を破裂させそのまま道に捨てるといった犯罪が起こっています。登校中の10歳の女の子は連れ去られ、暴行された末、殺されています。痛ましいことです。
  韓国はレイプ事件の多い国ですが、さすがにこれはなんたることだと大問題になっています。ちなみに韓国のレイプ事件は年々増えていて、2011年は約2万件あったというデータがあります。毎日50件を超えるレイプが起こっている計算です。日本は年間で1200件弱、日毎3件程度です。人口比で見ると韓国でのレイプは日本の約40倍です。
  日本も毎年3万人の自殺者を出しており、大きな問題なのですが、人口10万人当たりの自殺率を見ると、韓国が世界でもっとも高いのです。1年に1万5000人以上が自殺で亡くなっていて、全死亡原因中、およそ三分の一が自殺だという異常さです。WHOのデータによると、自殺率で1万人に3人を超えるのは、韓国とリトアニアだけです。
  それだけ韓国の人々は生きていくのに辛い社会、あるいは自殺に追いやられる非情な社会環境があるということです。脱北者が韓国の生活に耐えられず、北に戻るという事例さえ出てきました。

◆アメリカの要求する「市場開放」は恐ろしい――中丸

  李明博氏は、まさに国を売り飛ばしてしまったということです。韓国で起こったことが日本でも起きようとしています。韓国も日本も全部アメリカに支配される状況が迫っています。あらためて米韓FTAの恐ろしさを紹介するとすれば、やはりいわゆる「毒素条項」と言われているものですよね。市場開放はもちろんですか、一度規制を緩和するとどんなことがあっても元に戻せないという条項があるのです。
  例えば、狂牛病が発生しても牛肉の輸入を中断できません。市場開放を決めたらそうするしかない。
  韓国に投資したアメリカの企業が、韓国の政策によって損害を受けたり、期待した利益を得られなかったりした場合には、国際機関に提訴して、韓国の法律の下では裁判しないという決まりもあります。要は、アメリカが「市場開放せよ」といって、まずいろいろとねじ込んできて、効果がなければ韓国に文句を言うという決まりです。FTAはまさに韓国という国の独自性を奪う屈辱的な協定です。日本における脅威が、言うまでもなくTPPなのです。
  アメリカの企業やアメリカ人に対しては、韓国の法律より韓米FTAを優先して適用せよという条項もあります。韓国法では、日本と同じように公共企業やテレビ局などに、外資を制限していましたが、FTA締結後はもうこのようなこともできません。メディアも完全に乗っ取られてしまうことが現実に起きようとしているわけです。

◆韓国の金融機関はどれも「外資系」――菅沼

  韓国では、2012年4月に総選挙がありました。それまではおもに野党の人たちが、FTAに反対する声を挙げていました。ところが、野党は負けてしまった。そのために韓国はFTA賛成へと流れて行きました。どの国も、与党はアメリカに従属していくということになるのでしょうか。それだけアメリカが他国の政界に食い込んでいるということの表れでもあるのですけれど。
  FTAにしても問題は山積みです。現在、アメリカ産牛肉を世界でもっとも輸入している国は韓国です。それこそ、品質はまともなものから劣悪なものまで、様々な牛肉を韓国はアメリカから買っています。かつては日本がそうでした。しかし、現在は韓国がアメリカンビーフの最大消費地なのです。
  2011年10月。FTA批准に向けて、オバマ大統領から渇を入れられたか、何か引き換えになる利権の話でもされたかはわかりませんが、ちょうどFTAが結ばれる前に李明博氏かホワイトハウスを訪問しました。表向きには大歓迎を受ける形でしたね。オバマ大統領による歓待がありました。
  このときの晩餐会の料理に出たのがオバマ大統領自賛の牛肉でした。だがメニューのなかで使われた牛肉は高級和牛だったという笑い話があります。
  日本企業になりすまして世界に物を売る韓国企業や、執拗に反日を繰り返す韓国の元首に対しての痛烈な皮肉だった可能性もないことはないでしょう。おそらくアメリカ人の大雑把さでもあり、同時に韓国も日本も同じだろうという程度のセンスがやらかしたことだとは思います。晩餐の担当者にしてみれば、一番うまい牛肉を出すには、やはり和牛しかないだろうという程度のノリでしょう。
  というより、アメリカは食い物にしてしまおうという国に対して、この程度の扱いをするのです。とりあえず、うまいもので歓待しておけばいいだろう、という発想止まりです。
  うまいものでもてなすことなど、別に国賓の接待に限るようなことではなく、普通どこでもやっていることですよね。ホストが、よほど日本をよく知っている親日家でもない限り、日本の総理大臣や要人に対する態度も同じだと思いますよ。ましてや韓国人に対する接待について深い配慮が利く人などいないでしょう。
  ですが、いまからアメリカの商品をたくさん買いますよ、という韓国に対しては、礼を失した結果になってしまいました。おまけに反日を振りかざして人気を取ろうとする李明博大統領ですから「和牛を出すとは何事だ」とさすがに怒らせてしまった。でも、こういうことがあっても結局韓国はアメリアにへつらい、FTAをのんだわけです。
  サムスンとアップルの戦いは、アメリカではアップルに完璧に負けて、ものすごい賠償金を払わなければいけなくなりました。アメリカでは、スマートフォンのデザインや技術特許について、アップルとサムスン電子が互いに訴えていましたか、カリフォルニア州連邦地裁は、アップル側の主張をほぼ認めて、サムスンに日本円にしておよそ800億円の支払いを命じています。
  サムスンは控訴するかもしれませんが、厳しい結果が待っているのではないでしょうか。サムスンとアップルの訴訟は世界で繰り広げられていて、判決はいろいろですが、アメリカでは勝てません。
  これがアメリカの裁判所のやり方なのです。しかもアメリカのやることは本当にうまいと思うのですが、この判決を出したカリフォルニアの裁判所の判事は韓国系のアメリカ人の女性なのです。アメリカのロー・スクールを出て、女性としては珍しく判事に採用されています。もちろん陪審員制で行なわれた裁判ですが、訴訟指揮をするのは韓国系アメリカ人の女性判事だったのです。
  この女性判事がサムスンの弁護団に対して、ものすごく怒ったわけです。「あなた方の言い分は何事だ」と。その結果、陪審員は圧倒的多数でサムスンを特許違反としました。韓国人判事が場の雰囲気を支配すると、韓国側も、アメリカはけしからん、と言えないような気持ちになるのです。アメリカはそういうやり方をするのです。
  世界銀行もそうです。世銀のトップに韓国系のジム・ヨン・キム氏を据えました。こういう環境設定をしておいて、韓国には世銀の政策に対して有無を言わせず、潰していくのです。
  韓国の金融機関である韓国第一銀行は、外資100%です。90%、70%の外資が入った銀行もたくさんあります。もっとも少ない銀行でも34%が外資です。言ってみれば、すべて外資系金融機関なのです。韓国の一般企業もほとんどの資金を外資から借りています。サムスンを含めて、借金ばかりしています。特にヨーロッパの銀行からたくさん借りています。
  外資は吸い上げるだけ吸い上げて、少し傾いてくると、さっと引き揚げていきます。韓国企業の調子が悪くなったときもそうですが、欧州経済が傾くときも同様です。実際、ヨーロッパが危機に陥ったとき、引き揚げてしまったのです。こうなると途端にウォン安になります。リーマン・ショックのときほどではありませんが、2010年も2011年も急激に下げたり徐々に戻したりしながら、全体的にはウォン安傾向があります。
  ウォンはこのように不安定な通貨ですから、例の日韓通貨スワップ協定は、日本が韓国を支える手段として、中長期的にものすごく効果を発揮します。ウォン安が止まらなくなりそうなときに、韓国はウォンの担保を差し出し、日本はドル買い介入で溜まっているドルを貸し出します。
  日韓貿易では日本が儲かっていますので、韓国を支える意義はありますか、発動したあと、韓国は日本が融通した資金を返済できるのかという懸念はあります。しかし、いざとなったら日本が韓国を助ける準備をしているというだけで効果はあります。
  この協定は、2011年にウォンか急落していたときに、たまたま野田さんが、例の李朝の儀軌を李明博氏に渡しにソウルに出向いていたために、ついでに協定も結んできてしまった格好です。その額は、700億ドル。五兆円超ですから、ものすごい額です。ほかにも日本は韓国に巨額の債権を持っていますから、これについてそんなに騒ぐこともないのですが、韓国には借りたものは返すようにと言っておきたいですね。
  ちなみに韓国側から「返せ、返せ」とうるさかった李朝の儀軌を日本は渡してしまったために、今度は日本の国立博物館にある4000点以上もの文化財を渡せと言うようになりました。
  日韓通貨スワップ協定については、増額設定分の570億ドルの契約をやめ、130億ドルの協定に戻しました。韓国の国債を買うこともやめました。韓国にしてみれば、李明博大統領の暴言や竹島上陸で墓穴を掘ったわけです。これから韓国は、日本に対して、また世界に対してどのような外交をしていくつもりなのでしょうか。
  隣国は社会的にも経済的にも、さらには政治的にも最低・最悪の状況になりつつあります。このため、韓国は再度、李明博前大統領が仕向けたような反日を繰り広げなければならなくなるかもしれません。それで国内の状況の悪さをエスケープするのです。もっとも、中国の反日活動も条件的には近いものかもしれませんが。反日をやれば、日本はそれなりの対応をせざるを得ません。反日か終わると、最悪な状況の内政にげんなりするしかない。第一に、経済的な凋落は深刻です。反日をしたところで本質的な解決にはならない。韓国は負のスパイラルに巻き込まれてしまっていますね。

★ なわ・ふみひと の ひとくち解説 ★

  復活した自民党の安倍政権のもとで、日本もTPPへの加盟を決めました。その結果何が起こるかということが、日本に先駆けてアメリカと自由貿易協定(FTA)を結んだ韓国を例にとって紹介されています。いまの韓国の姿は明日の日本の姿だというわけです。多くの若者にまともな仕事はなくなり、社会はますます退廃化していくのです。そのような社会は韓国だけでなく、いまや世界中に広がりつつあります。そしてそのひな型は、なんとアメリカそのものにあるのです。アメリカ政府は闇の権力(世界支配層)に乗っ取られていますので、TPPなどの自由貿易協定によって加盟国から利益を吸い上げても、それがアメリカ国民に還元されることはなく、多国籍企業の懐が潤うだけなのです。最近出版された『(株)貧困大国アメリカ』(堤未果・著/岩波新書)を読むとその実情がよくわかります。彼ら世界支配層がこの国をどのような国にしたいと思っているかを知る上で参考になります。
  しかしながら、そのようなことがわかっていたとしても、もはや日本の政府はこの流れに逆らうことはできないのです。ささやかでも抵抗しようとすれば、中川昭一氏のように、自宅で葬り去られることになってしまうというわけです。別に危機を煽りたいわけではありませんが、多くの日本人がこのような現実を知らないまま、操られたマスコミの報道に洗脳されてノー天気な日々を送ることはあまりにも悲しいことなので、あえてご紹介しました。

国家破産は預金封鎖から始まる

預金封鎖

本吉正雄・著  PHP研究所


●第一次世界大戦後のドイツのハイパー・インフレ

 第一次世界大戦後のドイツで起こったハイパー・インフレーションでは、パンを一つ買うのに荷車一杯のお札が必要であった。
 ドイツは第一次世界大戦での敗北後、それまでの帝政からワイマール憲法による共和国となったが、その過程において社会的、政治的混乱を生じた。
 そして、戦災により生産が著しく減少したことに加え、ベルサイユ条約によって巨額の賠償を負担させられたために、財政赤字が急激に増大した。
 ドイツではこうした財政の支出を中央銀行であるライヒスバンクによる短期公債の引き受けという形で穴埋めしていた。
 このため、資産の裏付けのない不換紙幣がどんどん発行されるようになり、それに併せて紙幣の価値は減少していき、物価はうなぎ登りに上昇した。
 また、ドイツの通貨であるマルクの為替レートも下落していった。こうした物価の上昇と為替レートの下落は、復興のために国内外からの物資を必要としていたドイツ政府の財政赤字をさらに増大させ、それに対応するために不換紙幣を発行するという悪循環に至った。
 ドイツ政府はベルサイユ条約で定められた賠償金さえも支払い不能に陥ったため、フランスはドイツの主要産業都市であるルール地方を占領した。こうした事態が起こるに至って、ドイツの不換紙幣の信用は決定的に下落した。
 このため、ドイツでは不換紙幣を物資や海外資産に替えようとする動きが活発になり、物価は一日のうちにどんどん上がるといった様相を呈した。
 ドイツでは、家計を与る主婦が主人の工場の前で帰宅を待ち、出てきた主人の日給をひったくって市場へ行き、生活必需品を買い付けるという事態まであらわれた。
 帰宅するまで待っている間に物価が上昇し、生活必需品の値札が書き換えられてしまうためである。
 こうした狂乱物価の名残を示す高額紙幣については、日本銀行の貨幣博物館で目にすることができる。

●札を重さで計った戦後日本のハイパー・インフレ

 日本ではそこまで通貨の価値は下がらなかったものの、それでもお札の流通量は戦後の6カ月で数倍に膨れあがった。流通量が数倍ということは、単純に考えて物価が数十倍以上に上昇したと考えられる。
 この程度では荷車の出番はなかったものの、それでもお札を「枚数」ではなく「目方」で計るような事態はあちこちでみられた。
 当時、都市近郊の消費者に対して農産物を販売していた農家では、売り上げを計算する際に、当時の最高額面紙幣であった100円札を束にして1尺(約30センチ)に達すると祝宴をした、という光景が当時の新聞記事に取り上げられている。
 この1件をみてもわかるように、終戦直後はインフレーションの進展により最高額面の100円札でさえ厚さで計るような事態が生じていた。
 インフレーションの進展を取り上げた新聞記事でも、「100円といえば、つい先ごろまでは「大金」に属したが、いまではホームレスでも100円や200円の札を握っていることが珍しくない」と報じている。

●インフレの行き着く先は物々交換

 こうした状況下ではもはや通貨は意味をなさず、売り手がお札を受け取ることが拒否される事態も見受けられた。
 紙幣が、通貨が信用できないというハイパー・インフレーションの行き着く先は、原始的な「物々交換」であった。
 農村において通貨による取引ではなく物々交換が主要であったことから、当時の都市生活者も、食糧を手に入れるために自分の所有物との物々交換により生活必需品を入手するようになっていた。
 とくに衣類がその対象となったため、このような物々交換による生活については、「タケノコ生活」と評されていた。これは1枚、また1枚と衣類を持ち出す様子を、タケノコの皮を剥ぐ様子に喩えたもので、紙幣が通用しない世相を表す言葉としてはまさに的を射たものといえるであろう。

●預金封鎖より財産税が恐ろしい

 こうして下がってしまった不換紙幣・通貨の価値を高めるために、財産税を実施して紙幣の流通量を減少させ、そのために預金を封鎖して新円に切り替える、というのが戦後の預金封鎖・財産税の目的であった。
 ここで預金封鎖と財産税の関係について簡単に説明しておきたい。
 預金封鎖はその名が示すとおり、預金がおろせなくなることである。こうした措置は、インフレーションだけでなく、銀行の取り付け騒ぎが発生したときにも実施される。
 銀行の取り付け騒ぎで実施された預金封鎖としては、昭和初期の金融恐慌の際に行なわれた「モラトリアム(支払い停止措置)」がある。
 昭和初期の預金封鎖の際は、取り付け騒ぎの中で銀行が倒産するという金融恐慌をおさめるためであり、インフレーションは存在しなかった。
 このため、預金の引き出しを一時封鎖し、銀行に十分資金を行き渡らせたうえで預金封鎖を解除する、といった方策がとられ、財産税が実施されることはなかったのだ。つまり、預金封鎖だけであれば私たちの財産はさほどの影響を受けないのである。
 しかし、戦後の預金封鎖については財産税の徴収も同時に実施された。じつはこれが大問題なのである。戦後の預金封鎖は、財産税を徴収するために実施されたものであった。
 実際に私たちの生活に大きな影響を与えることになるのは、こうした財産税の徴収を前提とした預金封鎖の可能性であるため、私は預金封鎖を財産税とセットにして説明していきたい。

●財産税とセットで実施された戦後の預金封鎖

 戦後におけるハイパー・インフレーションの退治のためには、預金封鎖だけでは不十分であることは当時から理解されていたために、併せて財産税の徴収も行なわれたのだった。このあたりの事情については日本銀行出身のエコノミスト吉野俊彦氏が『戦後の金融政策の推移
と展望』(地方銀行協会編、銀行叢書Ⅵ)において、

 「昭和20年11月までは、財産税の調査の手段として旧券を新券に引き替え、預貯金に一時モラトリアム(筆者注:預金封鎖のこと)を布くことは決まっていたが、財産税の調査が終わったら解除するという考え方であったように思われるのであります。そこで日銀は政府と打ち合わせをして、新券の印刷を12月以前からやっておった。ところが預金引出の非常に顕著な状況から考えて、……本当に本格的なモラトリアムをやらざるを得ない。というようにだんだん考えが変わって来たのであります」

 と、当時の状況を述べている。

●「名寄せ」に使える「住基ネット」

 預金封鎖が困難な理由として、「名寄せ」の問題が重要であることはすでに指摘したとおりである。
 国民がどれだけの資産を持っているのか、預貯金・株式・国債・外貨・不動産をどれだけ持っているのかを明らかにしない限り、預金封鎖・財産税の徴収を行うことは不可能である。
 そして、それが不可能であれば預金封鎖が起こる可能性はきわめて低いということができる。
 では、「名寄せ」が簡単に実施できるとなればどうなるのであろうか。これでは国民の財産はもう外堀だけでなく内堀まで埋まったということができる。それこそ明日にでも預金封鎖・財産税の実施が行われる可能性さえあるのだ。
 実際にそんなことが可能なのであろうか。
 単純に結論を言えば十分に可能である。それを可能にするのは「住基ネット」と「納税者番号」の存在である。
 すでに米国では社会保障番号がID代わりになり、銀行口座の開設や不動産取引などの場面で使用されている。
 日本の住基ネットや「納税者番号」も、銀行口座の開設や各種の取引における利用が想定され、さまざまな研究・実験が行なわれているところである。
 この住基ネットを取引に利用できれば、これまで煩雑であった納税の手続きをネット上で完了させることができる。
 政府税制調査会では金融商品の一体課税を実現する際の必須条件として、平成17年までに納税者一人ひとりに番号を付けて管理する納税者番号制度を導入する方針を打ち出した。
 この制度を使えば、税務当局が納税者の取引内容全体を把握でき、都合のいい部分だけ損益を相殺して申告する不正操作を防げるためだ。
 ただプライバシー保護の観点から同制度への抵抗感も強く、一体課税の実現に向けた障壁になりかねない。
 このため財務省などでは納税者の理解を得ながら同制度を導入する方法として、金融商品の損益を相殺できるという税制上の恩恵と組み合わせて、希望者だけ番号を付ける案を考えている。
 もっとも当面は番号の取得者しか利用できず、税制の公平性の面から問題が残る。すでに国民についている基礎年金番号や住民基本台帳の住民コードを転用する案も出ているが、年金など他の公的サービスの番号を徴税にも利用することに国民の理解を得づらいのが問題となっている。

●なわ・ふみひとのひとくち解説

  日本政府の莫大な借金(国債)問題を解決するためには、ハイパーインフレが必要なのです。政府は国民に気づかれないようにしながら、しっかりとその準備を進めています。
 政府と日銀が結託して考えているシナリオは――

 ①国債と円の暴落 → ②緊急事態宣言(国家破産) → ③IMFへの支援要請
 → ④預金封鎖を初めとする荒療治

 ――ということではないかと思っています。
 元日銀マンの著者・本吉氏が本書で述べているように、国民の財産を把握するシステム(住基ネット=マイナンバー制度)が完成すれば、外堀も内堀も埋められた状態なのです。あとは、長期金利が上昇し、国債の暴落という引き金が引かれれば、国家破産が現実となります。
 以下は最近の新聞の記事です。さりげなく報道されたニュースの裏に潜む政府の意図に注目しておく必要があります。

■■毎日新聞ニュースメール
http://mainichi.jp/
2015年9月4日(金)朝
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金融資産の監視強化 マイナンバー

 10月から国民全員に通知されるマイナンバーを、2018年から任意で預金口座にも適用する改正マイナンバー法が3日の衆院本会議で成立し、マイナンバーの活用範囲が現在決まっている制度より広がり、国による金融資産の監視体制が強化されることになった。一体で審議された改正個人情報保護法も成立。企業が持つ膨大な個人情報「ビッグデータ」が活用しやすくなる。行政の効率化や利便性向上が期待される一方、個人情報の管理が課題となる。

2016年5月27日金曜日

日本は国家ではない。消えてなくなるだろう。

■日本をダメにした売国奴は誰だ!

前野徹・著/講談社+α文庫


●「日本は国家ではない」という発言

 平成7年、当時、中国の首相だった李鵬氏の発言をご存じだろうか。
 オーストラリアを訪問し、ハワード首相と会談した折、「中国はこれから、日本がお手本になるのでは」とのハワード首相の言葉に、李鵬首相は即座にこう答えた。
 「日本は国家じゃない。20年後には消えてなくなっているだろう」
 この発言は李鵬首相の思いつきなどではない。私は華僑のある有力者から、中国のCIAとも呼ばれている社会科学院の綿密な調査に基づいた発言ではないか、という話を聞かされた。

 事実、李鵬首相の予言が決して絵空事でなかったことは、現在の日本の衰退が示している。
 日本は国家ではない――この李鵬発言は私には十分に納得がいく。私から見ても、日本は外見上、国の体裁を整えているが、独立国とはとても言いがたいからだ。
 国家の大原則は、一に国土を守る、二に国民の生命を守る、三に国民の財産を守る。私はこれに加えて、伝統と文化を守ってこそ、独立国だとはじめて言えるると考えている。

 ところが、近年の日本の政治家はこの四大原則をことごとく守ってこなかった。
 一番目の原則、「国土を守る」。竹島問題に対する政府の対応が象徴的だ。
 竹島は日本と韓国のほぽ中間に浮かび、東島(女島)、西島(男島)と呼ばれる二つの小さな無人島と周辺の数十の岩礁からなる。総面積は約0.23平方キロで、東京の日比谷公園とほぼ同じ大きさ。日本では古くから松島の名で知られ、江戸時代初期に伯耆藩(鳥取県)の大谷、村川両家が幕府から拝領し、経営していたという記録があり、現在でも島根県隠岐郡隠岐の島町の一部として登録されている。
 歴史的にも、国際法上からも明らかな日本固有の領土が、韓国の実効支配下に置かれている。
 明治38(1905)年2月、閣議決定およびそれに続く島根県告示により、日本政府は近代国家として竹島を領有する意志を再確認した。これによって国際法上でも、竹島は日本の領土として認められ、以後、半世紀近く何の問題もなくきた。

 ところが終戦後、昭和27年発効のサンフランシスコ講和条約で日本が朝鮮の独立を承認し、朝鮮でのあらゆる権利を放棄したとたん、韓国政府が竹島の領有権を宣言した。
 この暴挙を行なったのは、韓国の李承晩・初代大統領。
 李大統領は天然資源や水産物の確保のためとして、一方的に領海水域を日本よりに設定した。これが悪名高き李承晩ラインで、竹島(韓国名・独島)も、そのなかに組み込まれた。

 以後、韓国は着々と既成事実を重ね、実効支配に乗り出し金泳三政権時代の平成9年、日本では橋本内閣時代、接岸施設を建設。周辺海域を国立公園に指定し、郵便番号をつけた。現在では、韓国によってつくられた五百トン級船舶の接岸施設や灯台、ヘリポートなどができあがっている。そして、平成16年1月16日には、記念切手まで発行してしまったのだ。

 実は50年前の昭和29年にも、韓国は同様に竹島切手を発行したことがある。このときは日本政府が「万国郵便連合」(UPU)に問題提起し、「二国間の紛争となるようなデザインはUPUの精神にそぐわない」との決議の採択を得た。
 だが、韓国はこりない。確信犯的に今回も竹島切手を発行してきたというわけだ。
 切手発行の予定を日本政府が知ったのは平成15年秋。政府は水面下で処理を試みた。

 9月、総務省は韓国に切手発行中止を求める書簡を送ったのち、外務省にバトンタッチ。外務省は何度も抗議を行ったとしているが、公にしなかったのは、北朝鮮をめぐる六カ国協議を控えて、外交問題に発展することを避けたかった、という本音があるようである。

 小泉総理も「波紋を広げるとか、荒立てる働きはしないほうがいい」とおよび腰で穏便にすまし、結局、韓国は切手の発行に踏み切った。

 これに対して立ち上がったのは、元東京学芸大学助教授の殿岡昭郎さん。2月初旬、対抗措置として東京中央郵便局に竹島の写真付き切手一万シートを発行したい旨、打診した。だが、日本郵政公社は切手としてふさわしくない、外交上の問題を起こす可能性があるという理由で、発行は認められないと回答した。
 自民党の有志議員の「国家基本政策協議会」が殿岡さんの支援活動を行っているが、小泉政権は対抗手段としての竹島切手の発行を拒否する日本郵政公社の見解を、事実上、支持している。
 領土を乗っ取られる側の日本政府が、相手に気兼ねして抗議らしい抗議もしない。対して、侵略を企てる韓国政府は強気一辺倒だ。

 盧武鉉・韓国大統領は年頭の記者会見で「独島は韓国が実効支配している」と語り、日本の切手発行中止の要求に応じなかったばかりか、「自分の妻のことを、妻だ妻だと何度も繰り返さないのと同様、論争も必要ない。この問題が韓日の他分野の友好関係に影響を与えないよう無益な騒ぎは避けたい」とまでしやあしやあと言ってのけた。
 韓国の最高責任者である大統領が日本の領土をわが領土だと明言したのだ。本来なら宣戦布告ものの重大な侵略行為である。

 ところが、この無法行為に対して、日本国の最高責任者、小泉純一郎総理をはじめとして政治家は抗議らしい抗議もしない。与党内で大問題に発展することもなければ、野党が国会で追及することもない。なんとあきれ果てた政治家たちなのだろうか。
 島根県の澄田信義知事は「日本の領土が侵されている」と政府に何度か陳情したものの、なしのいぶてだった。
 小泉総理も「いつかは取り上げるけれど、いまはまずいよ」と言ったという。私は正直、日本は半分崩壊したなと感じた。

 一方、韓国はあくまでも強硬姿勢で、日本側が少しでも竹島の領有権に触れると、政治家、国民、マスコミが一丸となって猛抗議が巻き起こる。
 たとえば、澄田信義知事が、「わが固有の領土である竹島が韓国に不法占拠され、主権が行使できない状態はまことに遺憾だ」と述べたところ、島根県と姉妹自治体関係を結んでいた韓国・慶尚北道が反発、交流事業を即座に中断した。

 平成14年春、日本の高校教科書検定に合格した明成社の日本史Bに、「わが国固有の領上が他国の脅威にさらされている現実をみのがしてはならない。……韓国が島根県の領有権を、また中国などが沖縄県の尖閣諸島の領有権を主張している」との記述があった。
 それを知った韓国政府は、「一部日本の高校歴史教科書が近隣国家との歴史を正しく記述せず、正しい歴史認識が欠如した内容をふくんでいることを憂慮する」と即座に抗議声明を発表し、在韓国日本大使館を通じて日本政府に通達した。かたやごり押しで領有権を主張し、既成事実を積み重ねる韓国。かたや自国の教科書に口をはさまれる内政干渉を許し、領土の不法占拠を見て見ぬふりをする日本の政治家たち。竹島が名実ともに韓国にかすめ取られる日もそう遠くはない。

★ひとくちコメント――数少ない憂国の士のひとりであった著者・前野氏は既に鬼籍に入ってしまわれ、このような主張をするオピニオンリーダーはこの国からいなくなりつつあります。また、NHKや朝日新聞を初めとする主要マスコミには、既に中国や韓国あるいは北朝鮮を日本以上に大切に思う勢力の息がかかってしまっていますので、もはやどうすることもできません。もしいま日本の首相が「韓国は(あるいは中国は)国家じゃない」といった発言をしたらどういうことが起こるかは容易に想像できます。猛烈な抗議を受けて、日本は平謝りをさせられることになるのは間違いないでしょう。
 もはやマスコミだけでなく、有力な政治家といえども、命を賭けることなしにはこの現実を覆すことができないほど日本は外国の勢力によってがんじがらめにされてしまっているということです。このまま行けばこの国は、領土はもちろん、国民の財産も、そして国民の命さえも守ることができなくなるのは目に見えています。中国の李鵬元首相が予言したとおり、もはやわが日本は「国家」ではなくなっているのです。この現実は直視しておきたいと思います。(なわ・ふみひと)